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ロシア13歳天才少女トゥルソワの4回転技術は羽生結弦にソックリだった!


ロシア13歳天才少女トゥルソワの4回転技術は羽生結弦にソックリだった!

2018年03月12日

 世界のフィギュア界に衝撃が走った。ブルガリアで開催されていたフィギュアの世界ジュニア選手権でロシアのアレクサンドラ・トゥルソワ(13)がフリーで4回転を2度成功させたのだ。フリーの冒頭に4回転サルコーを成功させると、続く4回転トゥループも着氷。基礎点が1.1倍となる後半には、平昌五輪の金メダリスト、アリーナ・ザギトワ(15、ロシア)が武器とする難易度の高い3回転ルッツ+3回転ループの連続ジャンプまで決めて歴代5位となる計225.52点の高得点で優勝した。女子の公式戦での4回転ジャンプの成功は、2002年の安藤美姫の4回転サルコー以来。しかもサルコーにはGOEが2.00点加算された。脅威の13歳である。

 元全日本2位で現在福岡で後進の指導を行っている中庭健介氏に映像を分析してもらったが、「正直、驚きました。ジュニアGPシリーズの初戦から4回転サルコウに挑戦していましたが、まだ未完成で回転不足を取られていました。昨年12月のGPファイナルでも失敗していました。それがたった2ヶ月で、完璧にサルコーだけでなくトゥループを成功させるまでに急激に成長していたのです。信じられません」と驚きの声をあげた。

 そのトゥルソワの4回転は平昌五輪金メダリストの羽生結弦にソックリのスタイルだという。

「彼女の4回転ジャンプは、技術的に羽生選手に似た理想的な4回転ジャンプです。ジャンプへの入り(エントランス)がまず似ています。サルコーは強引に飛んだイメージですが、トゥループへの入りは羽生選手のように美しい。なぜ、そういうジャンプに見えるかというと、トゥループは、左足のトゥを使って飛ぶジャンプですが、まずは右足のエッジを滑らせます。その右足が非常に滑らかに加速されています。そこからトゥをつきにいけている部分と、身体全体が前後に長く伸びながら、ジャンプへの準備をして、この時、身体にひねりが生まれます。回転に必要なタメを生み出す事ができています。この2つの特徴的な身体の使い方と雰囲気も含めて羽生選手の4回転トゥループに非常によく似ているのです」

 ジャンプに入るエントランスには、大きく分けて片足で3の字を描く「スリーターン」と両足で乗り換えてターンする「モホークターン」の2種類があり、それぞれをジャンプによって使い分ける選手や、すべて同じ種類にまとめている選手などがいるが、羽生は、4回転トゥループは「スリーターン」、4回転サルコーには「モホークターン」を使う。今回、トゥルソワも、4回転トゥループには「スリーターン」、サルコーには「モホークターン」を使った。まったく同じだ。

「スリーターンは、回転の勢いや流れがつくりやすいのですが、身体が回りすぎて、パンク(回転が1回転などになってしまう失敗)が多くなる傾向があります。またモホークターンは選手が踏み切る時に身体が回っていくのをコントロールしやすいのですが、勢いや流れをつくりにくいのです。それぞれに長短の特徴があり選手とコーチが試行錯誤を繰り返しながら選択をしていきます」(中庭氏)という。

 そもそも、なぜトゥルソワは2種類もの4回転ジャンプを成功させることができたのか。

 中庭氏は、「まだ13歳で体が軽く、細いのでパワーがなくとも身体の巧みな動かし方や、滑りの質により、速い回転が可能になっているからではないでしょうか。さらには4回転ジャンプを心から成功したいという思いがあることが大きいです」という。
 
 

 女子はジュニアだけでなくシニアでもショートプログラムに4回転ジャンプを組み入れることが規定で認められていない。だが、トゥルソワはフリーで基礎点が10.5点のサルコーと10.3点のトゥループをプログラムに組み込んだことで、技術点の合計が92.35点になった。これは、平昌五輪のフリーでザギトワがマークした技術点81.62点を10点以上も上回るもの。しかも、ジュニアはシニアに比べてコレオシークエンスがひとつ少ないルールなのだ。シニアならば、さらに得点がアップしていたことになる。

 こうなると、もう他の選手は誰も歯が立たなくなる。
 しかも、競技後、トゥルソワは、「優勝できたことに加えて、2つの4回転ジャンプが成功できてうれしい。今後? 他の4回転も習得したいし、もし可能ならば全部やりたい」とまでコメントした。 

 女子の4回転時代の到来をトゥルソワが打ち鳴らしたことになる。

「トゥルソワ選手が4回転時代のドアを開けました。彼女に勝つためには、高い技術点がないと対抗はできません。今後、世界の頂点を目標とするならば4回転、トリプルアクセルが必須になってくるでしょう」と中庭氏。さらにロシアには、年齢的にジュニアGPシリーズに出場できなかったが、先のロシア・カップでトゥルソワを抑えて優勝したアンナ・シャルバコワという13歳の4回転の使い手が秘密兵器として控えている。金メダリストのザギトワ、銀メダリストのメドベージェワの牙城に迫る次の世代が続々と腕ぶしている。

 しかし、羽生の例を見るまでもなく4回転時代には怪我というリスクもつきまとう。早熟型のロシアでは、選手生命が極端に短いという傾向もある。ソチ五輪の団体戦の金メダリストで“キャンドルスピン”で名を馳せたユリア・リプニツカヤは、摂食障害などで潰れた。4年後の北京五輪の金メダル候補としてトゥルソワの名前をすっと挙げることができない理由もそこにある。

「ソチ五輪のリプニツカヤの例を見るまでもなく、10代半ばから後半にかけてのロシアの選手は強いのです。しかしながら、選手寿命が短命に終わる傾向にもあります。理由は、様々あると思いますが、体の軽い若年期に技術を会得したものの、年齢と共に身体が変化し、持っているイメージと技術がずれやすく、それを成長に合わせて調整したり、成長期特有の故障や気持ちの変化、それによるモチベーションの維持などの難しい問題があると言えます。トゥルソワは、年齢的には4年後の北京五輪で17歳ですが、今後、それらの身体と精神のコントロールの問題などで伸び悩む可能性も否定できません。北京で彼女が金メダル候補か? と聞かれれば、名前を挙げたいのですが、まだそれを断言できない状況にもあります」

 中庭氏の見立ては厳しいが、世界一選手層の厚いロシアが先陣を切る形で、女子も4回転時代に突入したことは間違いないだろう。

 今回、フリーでのトリプルアクセルに失敗、8位に終わった紀平梨花(関大ク)も練習では4回転サルコーに挑戦している。3位に入った山下真瑚(グランプリ東海ク)も、滞空時間の長いジャンプと力強く伸びやかなスケーティングが持ち味。日本勢がロシアに対抗するためには、4回転ジャンプの会得が切り札になってくるのかもしれない。


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