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カタール戦の勝敗は紙一重の差。だからこそ森保采配に疑問符がつく


2019年02月06日

 UAEで開催されたアジアカップの決勝。通算4度の優勝を誇る日本と初優勝を目指すカタールの一戦は、大方の予想を覆し、1-3でカタールが勝利した。昨年7月に発足した森保ジャパンが、12戦目にして喫した初黒星だった。

 選手の国際経験、FIFAランキング、スタメンの所属クラブ、決勝前の休養日が1日多いことも含めて、日本に死角はなかったはず。しかし、勝敗を決めるのはチームの総合力だけに限らないのがサッカーだ。予想外の展開、たったひとつのプレーで明暗が分かれることはよくあることで、それは日本が3-0で勝利したイラン戦でも証明されている。そういう意味では、日本にとっての決勝は、準決勝と逆の立場になったと受け止めることもできる。


森保ジャパンにとって初の国際大会となったアジアカップは準優勝だった

 実際、今回の決勝をあらためて掘り下げてみると、内容では日本とカタールの間にスコアほどの差はなかったことが浮かび上がってくる。日本がカタールに完敗した印象を受けてしまいがちだが、内容ではほぼ互角だった。

 この試合、前半はカタールのペースで、後半は日本のペース。スタッツを紐解くと、日本がカタールを上回った項目は多い。1試合トータルのシュート数は日本の12に対してカタールは9(枠内シュート数は1対3)。ボール支配率は日本の61.5%対カタールの38.5%、パス本数は493対327(パス成功率は83%対75.8%)。タックル数は11対21(タックル成功率は72.7%対76.2%)とカタールに軍配は上がったが、コーナーキック数も含めた攻撃面におけるスタッツの多くで、日本はカタールに勝っていた。

「たられば」の話をすれば、12分の19番(アルモエズ・アリ)のオーバーヘッドシュートがポストを直撃したあとにボールが枠外に転がっていれば、あるいは、80分のコーナーキックでボールが吉田麻也(サウサンプトン)の手に当たっていなかったら、試合はどうなっていたかわからない。

 格下のカタールとほぼ互角だったこと自体がそもそも問題とも言えるが、とにかく1-3というスコアに相応しい内容だったとは言い切れない。では、勝敗を分けた要素はどこにあったのか? 実はそこが、今大会で浮き彫りになった森保ジャパン最大の問題点になる。

 決勝の日本のスタメンは、予想どおりAチームの編成。準決勝からの変更は、その試合で負傷交代した遠藤航(シント・トロイデン)に代わって、塩谷司(アルアイン)がボランチに入ったのみ。システムも、これまでどおりの4-2-3-1を採用した。

 一方のカタール率いるフェリックス・サンチェス監督は、準決勝までの6試合で3つのシステムを使い分けて勝ち抜いてきた。グループステージの1、2戦(レバノン戦、北朝鮮戦)は4-3-3、3戦目のサウジアラビア戦と準々決勝の韓国戦は5-3-2(3-5-2)、そしてラウンド16のイラク戦と準決勝のUAE戦は4-2-3-1。格下には攻撃的な4-3-3、互角の相手に対しては4-2-3-1、格上に対する時は守備に重きを置いた5-3-2というパターンでシステムを使い分けてきた。つまり、格上である日本との決勝戦では、韓国から金星を挙げた試合と同じ5-3-2を採用する。そう予想するのが妥当だった。

 果たして、5-3-2のフォーメーションのカタールに対し、森保ジャパンは序盤から苦戦を強いられた。とりわけ敗戦後にクローズアップされたのが、4-2-3-1と5-3-2の噛み合わせの問題だ。それにより、日本代表の前からのディフェンスが機能せず、前半は相手に主導権を握られて2失点を喫した。

 試合後の会見でその点を問われた森保一監督は、「相手が5バック、3バックであることを想定しながら準備をしたが、選手が思い切ってプレーできる状態にまで準備できなかったことは自分の責任」とコメントしている。

 ここで思い出してほしいのは、森保監督がサンフレッチェ広島時代に3バック(5バック)で数々のタイトルを獲得した指導者ということだ。3バックか5バックを採用して4-2-3-1のチームから勝利を収めた経験も多いわけで、5バックの弱点や、対峙したときの問題の解決策を知らないわけがない。そう考えると、システムの噛み合わせが悪かったという現象だけを敗因とすることには無理がある。

 では、なぜ3バックや5バックの弱点を熟知しているはずの森保監督は、相手が3バックでくることを想定しながら、その対策をチームに落とし込めなかったのか。そこを敗因としてクローズアップするなら、森保監督のチーム作りのアプローチそのものを追求しなければ、前半の劣勢を論理的に説明することは困難だ。

 今大会、日本が5バックの相手と戦った試合は初戦のトルクメニスタン戦と準々決勝のベトナム戦、そして決勝のカタール戦だった。日本の中央への縦パスを封じる狙いは3チームとも同じだったが、ボール奪取後のプレーはカタールだけ違っていた。1トップに当てるのではなく、かなり高い確率で11番(アクラム・ハッサン・アフィフ)を経由し、彼を起点にゴールを目指していたのだ。11番が準決勝までの6試合で記録したアシストは8。19番が8ゴールをマークしていたことと合わせて、カタールの攻撃の最大の特徴となっていた。

 この11番が、日本のセンターバックとダブルボランチの間のスペース、両サイドバックの背後に空いたスペース、ボランチと2列目の間に空いたスペースと、前後左右にポジションを変えて何度もチャンスを作り出した。

 決勝前半の11番のポジションは、5-3-2の2トップの一角。しかし立ち位置は、1トップ気味の19番よりも少し低いポジションで、5-3-1-1のトップ下だったとも言える。

 それに対して、日本は11番のマークの受け渡しが曖昧なまま守備を続けてしまい、そこが修正すべき点だったのは明らかだった。前半の2失点の原因、さらに言えば試合の敗因はそこにあると言っても過言ではないだろう。

 しかし、森保監督は先制を許したあとも修正の指示を送ることはなく、それを放置してしまったがために、勝敗を分けた2失点目を招いた。

 なぜ森保監督は問題を放置したのか。それは、選手の自主性を尊重するという森保監督のチーム作りのアプローチを考えてみれば、腑に落ちる。35分、ピッチサイドで森保監督と大迫勇也(ブレーメン)が会話をかわし、その直後から日本は守備時の2列目の立ち位置が修正されたが、その修正はどちらの発案だったのか。

 結局、「先に2失点して難しい展開になった」(森保監督)という前半は、日本の良さを出せないまま。森保ジャパンのバロメーターである縦パスは、柴崎岳(ヘタフェ)と塩谷が3本、吉田と冨安健洋(シント・トロイデン)は1本のみ。生命線と言える大迫へのパスコースも封じられた。

 後半は一転、後がない日本が一方的に押し込む展開が続いた。後半開始直後のカタールのシステムは5-4-1。2点リードという状況を考えれば、カタールが守備に重きを置くのも当然だ。

 後半は、今大会でもっとも森保ジャパンの特長が出た45分間だったと言える。リードした格下が守りに入ったとき、格上にチャンスが生まれるという、サッカーの試合でよく見られる展開になった。中2日のカタールが疲労し始め、受けに回っていたことも影響したが、3-0で勝ったイラン戦の開始20分間よりも日本のサッカーは機能していた。

 ダブルボランチから前線への縦パスは、不成功も含めて柴崎が5本、塩谷が7本。そのうち69分の塩谷の縦パスが、南野拓実(ザルツブルク)のゴールにつながった。また、両サイドバックから前線へのパスも前半とほぼ同じペースで打ち込まれ、サイドからのクロスも前半の7本から後半は11本に増加。相手の大迫へのマークもずれ始め、日本は大迫を起点に攻撃の形を作れるようになった。

 同点ゴールは時間の問題──。そう思うほど、日本がカタールを圧倒する時間が続いたが、その状況を一変させたのが79分のカタールの攻撃だった。防戦一方だったカタールが後半初めて作ったそのチャンスは、11番のドリブルによるカウンターから6番がフィニッシュを狙ったシーン。その直後のカタールのコーナーキックのシーンで、カタールの選手と競り合った吉田の手にボールが当たり、これがハンドの判定に。それによって得たPKをカタールが決めた時点で、日本の敗戦は決定的となった。

 スコアとは裏腹に、この試合の勝敗が紙一重の差だったと言える根拠はこのPKとなったシーンにもあるが、それ以外の部分で日本の敗因を探ってみると、どうしても「指揮官の采配」に突きあたる。監督自らも悔やんだ5バックの相手への対応、11番のマーキングの修正、さらには後半の遅きに失した選手交代……。

 結局、森保監督のチーム作りのアプローチが「選手主導」だったことが、最後に優勝を逃した原因であり、森保ジャパンが大会を通して露呈した問題の根源だった。気になるのは、あえてそうしたのか、そうすることしかできなかったのか、という点だ。

「監督としては、選手やスタッフが最大限の努力をしてくれたことを結果に結びつけることができず、もっと力をつけなければいけないという思いがある」

 カタールに負けた試合後の会見で、森保監督はそう言った。だとすれば、後者と見られても仕方がないだろう。

 今回の結果を受けて、監督の進退問題に発展する気配はないが、少なくとも日本サッカー協会は、客観的に今大会を総括し、指揮官に対する評価を公にすべきだろう。


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