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スペインの目利きがアジア杯の日本に警鐘。「安易な中央攻めが多い」


2019年02月06日

ミケル・エチャリのサウジアラビア戦レポートを読む>>

「好むと好まざるにかかわらず、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が大きな影響を及ぼした一戦になった。CKからのゴールを主審が認めたあと、VARで取り消しに。その後、今度は審判が流していたPKのシーンが、2分後にVARでPKと判定され、これが決勝点になった」


ベトナム戦の日本の唯一のゴールは堂安律のPKだった

 スペインの目利き、ミケル・エチャリはアジアカップ準々決勝、日本がベトナムに1-0で勝利を飾った試合について、淡々と振り返っている。

 エチャリはレアル・ソシエダで、戦略分析担当を務めていた。対戦相手を徹底的に分析し、戦い方を促す参謀役だ。チームの長所、欠点を見抜くだけでなく、その回路を解き明かす能力を持っている。

 そのエチャリは、ベトナム戦をどう見たのか?

「日本は4-2-3-1の布陣でスタートした。南野拓実(ザルツブルク)、北川航也(清水エスパルス)の関係性を考えると、どちらもトップ下のような動きで連係しており、4-4-2と表した方が適切かもしれない。

 一方のベトナムは5-4-1のシステム。基本的にリトリートし、1トップのグエン・コン・フオンがカウンターの起点になっている。両サイドの2人の選手がそこに絡み合った。

 必然的に、日本が攻め、ベトナムが守りながらカウンターを狙う展開になった。日本は堂安律(フローニンゲン)、原口元気(ハノーファー)がダイアゴナルの動きで、酒井宏樹(マルセイユ)、長友佑都(ガラタサライ)の攻撃参加を引き出す。ハイプレッシャーも含め、前から行く意欲を見せた。

 しかし、日本は直線的な攻撃で、”急ぎすぎ”が目立った。柴崎岳(ヘタフェ)から堂安へ、すばらしい縦パスが入る場面もあった。ただ、チームとしてあまりにインサイドへのパスを集中させ、しばしばカットされていた。中央の道を遮断し、手ぐすねを引いていたベトナムの罠にかかっていたのだ。

 実際、効果的にゴール前に迫っていたのはベトナムの方だった。前半14分、グエン・コン・フオンは味方がはじき返したボールを収め、ディフェンダーを外し、シュートを打っている。その直後のプレーは、オフサイドと判定されたが、繰り出すカウンターは脅威だった。

 トルクメニスタン戦もそうだったが、日本は、攻撃と守備のバランスを簡単に失ってしまう癖がある」

 エチャリは、安易に前がかりになることの危険性を強く訴えている。もし相手のチームの監督が有能で、授けた策を実行できる選手がいた場合、試合を決める要素になり得るからだ。

「日本も、パスの奪い合いを見せた。ボール奪取から縦パスを収めた北川が反転し、原口へ。これが相手に当たってCKとなった。そして、柴崎が蹴ったボールを吉田麻也(サウサンプトン)が押し込んだ。

 ただ、このゴールはVAR判定でハンドとされ、取り消されている。

 日本は得意のコンビネーションを使った攻撃を随所に見せていた。酒井、南野、堂安が絡んだ連係は、シュートまでいかなかったものの、特長を示している。酒井、堂安を中心とした右サイドは優勢だった。

 しかし、チームとしては高いポゼッション率を示しながらも、いたずらに中央からの攻めに固執する姿が目についた。インサイドからの攻めに固執するのは危険だろう。容易に崩せないだけでなく、カウンターを浴びる可能性があった」

 エチャリは繰り返し、警鐘を鳴らしている。

「後半も、試合の形勢は変わっていない。日本が攻め、ベトナムが守りながらカウンターを狙う。その均衡のまま、時間が過ぎている。

 日本の攻撃自体は悪くないが、やはりボールより前に人が多すぎた。一度、冨安健洋(スント・トロインデン)がボールを運んで的陣に入ったとき、後ろには吉田と権田修一(ポルティモネンセ)しかいない場面があった。失点のリスクを重く考えるべきだろう。

 後半12分、堂安がゴール前で相手に足をかけられて転倒。主審は流したが、VARでPKとなった。これを堂安自身が左足でゴールに蹴り込んだ。

 先制できたことはよかったが、その後も日本は大勢がボールより前でプレーしていた。すばらしいコンビネーションもあったとはいえ、これほど危険を冒すべきだったか。北川、南野とつないで、長友がオフサイドになったシーンは悪くなかったが……」

 エチャリ曰く、日本は攻守のバランスを失っていた。だが、後半27分に北川を下げて大迫勇也(ブレーメン)を入れることで「戦術的には好転した」と言う。

「大迫は相手を背負ったプレーができる。彼が時間、空間を作って、日本はプレーが落ち着いた。コンビネーションの起点になって、攻撃の渦が生まれた。堂安、南野の動きも改善されている。

 どうしても得点がほしいベトナムは、後半途中から4-4-2、4-3-3とシステムを変更。オールプレスで、前がかりになった。大迫から2度ボールを奪い返すなど、反撃を見せたものの、吉田、冨安の堅固な守備に阻まれた。

 日本は終盤、南野を下げ、塩谷司(アルアイン)を投入。完全な守備固めで守りきっている。最後は力の差が出たのは確かだが」

 最後に、エチャリはこの試合をこう結論づけた。

「準決勝に進出したチームを、心から祝福したい。しかし、7割近いポゼッションだったにもかかわらず、決定機は少なかった。そして安易な中央からの攻めによって、カウンターの罠にはまりかけている。『攻撃の自由は、あくまで守備の堅牢さに基づく』という戒めを忘れないことだ」
(つづく)


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